iGEMわからない人のまとめブログ

合成生物学ぜんぜんわからん人が書いてます。

11_滅菌のはなし

こんにちは、雑草です。11記事目です。

 

昨日ローソンでおでんを買って食べて、秋を感じました。

 

今日もこの構成でいきます!

内容は滅菌についてです。 

 

1.目的

2.手段

3.内容

4.メモ(箇条書き)

 

【目的】

滅菌(めっきん)を5W1Hで理解する。 

 

【手段】

iGEMでよく出会う場面ごとに例をあげて説明する。 

 

【内容】

 

まとめ:

1.What 滅菌とは、培養液中や器具などにいる菌を殺し、無菌にする処理のこと。

2.Why やる理由は、目的の菌以外が混入して増えるとこまるから。また、長期保存を可能にするため。

3.When  やるタイミングは、主に実験前の器具準備と実験後の培養液の処理のとき。

4.Who やる人は、実験者。

5.Which 対象となるのは、エッペンチューブやピペットのチップ、三角フラスコなど菌を増やす液に触れる予定or触れたもの全て。

また培地そのものであるLB培地や、精製DNAなどいずれ菌の培養液と混ぜる予定のもの(形質転換などで)を入れるエッペンチューブなども対象。

6.How 3種類くらいやり方があります。後述。

 

おもに6.Howの話をしたい記事ですので、1~5.はふーんと思いながらお読みください。

それではいってみましょう。

 

1.Whatと2.Whyをまとめて

 

「滅菌」とは器具や培養液を無菌に近い状態にするための処理です。

遺伝子組換え実験をまったく知らない人でも、滅菌の重要性は理解しやすいと思います。

 

まず知っておくべきなのは、

・普段の生活レベルの「清潔」と実験室で必要な「滅菌された状態」は異なるということです。

 

 

たとえば手や机が一見きれいでも、肉眼で見えないだけでそこには沢山の微生物がいます。

遺伝子組換え実験で用いるエッペンチューブやピペットのチップ(使い捨ての先っぽ)も、かなり綺麗ですがやはりそのままではダメなのです。

 

「遺伝子組換え実験をするために」十分なように、滅菌して実験中限りなく無菌状態に近くする必要があります。

 

限りなく無菌状態に近く……と書いたのは、自分はオートクレーブ直後は無菌でも、(たとえクリーンベンチの中だとしても)実験していく中で外気に触れればごくわずかな菌は入るはずと考えているからです。

 

3.Whenと4.Whoをまとめて

 

これはそんなに言うことないです。

まとめで書いた通りです。

 

実験器具を使う前に滅菌して、実験が終わったら菌がついた器具や培養液を滅菌して捨てます。

なお弊チームの実験室ではチップごみやシャーレなどは決まった場所に捨てて、研究室単位で滅菌していました。

 

菌がいっぱい入った培養液を水道に流すのは直感的にも抵抗ありますよね。

汚いのでちゃんと滅菌しましょう。

特に遺伝子組み換えした菌を研究室の外に出すことは法律で厳しく禁じられているので、絶対ダメです。

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成十五年 法律第九十七号)」でググってみてください。

 

5.Which

これもほぼまとめに短く書いた通り。

この後の話をしたいので流します。

 

6.How

今日のメインです!

 

iGEMでよく使う滅菌のやり方は大きく分けて3つあります。

 

1)オートクレーブ

2)次亜塩素酸ナトリウムで死なせる(市販のハイターなどの漂白剤)

3)フィルター滅菌 

 

このほかにも滅菌方法はありますが、今回はこの3つにスポットをしぼります。

 

順番に説明します。

 

1)オートクレーブ

 

最もよく使われるオーソドックスな方法です。

 

スリムな洗濯機のような形をした機械で、中は空洞になっています。

121 ℃で20分の処理をして、高圧高温の蒸気で滅菌します。

 

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Fig1. 弊チームが2019年に使用したオートクレーブ

 

ほんとうはもっと高い温度で短い時間あるいはその反対の組み合わせでもいいのですが、教科書などでよく見かけるのは121℃で20分です。

 

ざっくり代表的なもののオートクレーブのかけ方を紹介します。

ここは読み飛ばしてもOKです。

 

LB培地→三角フラスコで調製してアルミホイルで蓋をし、オートクレーブテープを貼ってオートクレーブ。

エッペンチューブ→空の瓶に入れてアルミホイルで蓋をし以下略

ファルコンチューブ蓋をゆるめてアルミホイルで包み、以下略

 

オートクレーブテープというのは工事現場みたいな柄したマスキングテープに似たテープです。

オートクレーブする前は白と黄色のしましまですが、オートクレーブにかけたあとは白い部分が黒くなって「確かにオートクレーブされましたよ」という証明になります。

これによって、機械の故障でオートクレーブされてなかったけど気づかなかった、といった事故を防ぐことができます。

 

ファルコンチューブをオートクレーブするとき蓋をゆるめるのは、そのままオートクレーブすると中の空気が膨張してチューブがゆがむからです。

ファルコンチューブと蓋を別々にすると蓋をするときに菌が入るので、ゆるめるだけにします。

 

2)次亜塩素酸ナトリウムで死なせる(市販のハイターなどの漂白剤)

 

基本的にはオートクレーブを使っておけば無敵なのですが、

研究室によっては「器具を滅菌するためのきれいなオートクレーブで実験したあとの汚い培養液を滅菌したくない、分けたい」と考えています。

 

弊チームがお世話になっている実験室もそうです。

 

そこで培養したあとの菌液や菌に触れた器具はハイターで滅菌していました。

バケツに水とハイターを入れて、そこに大腸菌が入っていたエッペンチューブやファルコンチューブなどを培養液ごとじゃぼんと入れます。

 

そして菌が完全に死に絶えるまで1~2時間放置してから、あとは普通に洗っていました。

 

 

3)フィルター滅菌

 

オートクレーブとハイターを使った滅菌にはそれぞれ弱点があります。

 

【弱点】

オートクレーブ:熱に弱いものにはつかえない。

ハイター:混ざってしまうので、液体にはつかえない。

 

そのため、例えば抗生物質のような「熱に弱い液体」を滅菌したいときにはフィルター滅菌を行います。

 

フィルター滅菌は専用の使い捨てシリンジをつかって行います。

くわしくは実際に実験やるときに教授や説明書を見ると思うので省略しますが、

要はめちゃくちゃすごいろ過のようなものです。

 

こういうやつですね。

滅菌ろ過用フィルター 【AXEL】 アズワン

 

 

【おまけ】必須アイテムの70%エタノール(通称7エタ)

 

滅菌よりカジュアルに、より頻繁に行われるのが7エタを使った殺菌です。

 

7エタはエタノール:水を7:3の比で混ぜたものです。

ちなみに70 %エタノールは100 %エタノールより殺菌力が高いです。

 

7エタによる殺菌は完璧ではありませんが、何かとよく使うので、だいたいどこの研究室でも各自調整した7エタをスプレーに入れて1人1つ持っているのではないかと思います。

 

明日はそんな7エタについての記事を書きたいと思います。

今日よりは楽そう(*ノωノ)

 

では今日は以上です。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

お疲れさまでした。  

 

参考文献

・大藤道衛,"バイオ実験意外に知らない、いまさら聞けない超基本Q&A",pp205-206,2019,羊土社

 

【メモ】  

~今後書きたい記事~

 

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